令和3年度の高齢者住宅政策、
 並びに民間事業者に期待する役割について

国土交通省住宅局安心居住推進課 企画専門官 上野翔平

サービス付き高齢者住宅 (サ高住) や住宅セーフティネットに取組んでおられる国交省住宅局安心居住推進課上野企画専門官に、高齢者が安心して自分らしく生活できる住まいと地域づくりに関する施策についてのお話を伺いました。

(1) 地域包括ケアシステムの構築

 今年の3月に閣議決定した『新たな住生活基本計画 (全国計画)』では、「居住者・コミュニティ」の視点から目標の1つを「多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり」としています。そして成果指標として、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を、平成30年の2.5%から、令和12年までに4%としています。高齢者を含めた共生社会を目指すという大きな方向性の1つの核が、厚労省で進めている地域包括ケアシステムの構築になると思います。
 2025年に75歳以上人口がピークを迎え、それ以降は減ることなく推移すると予測され、要介護・要支援認定を受ける方も増えていくと考えられます。厚労省が2025年を目途に構築を進めている、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制を、地域包括ケアシステムと呼んでいます。その中心には住まいがあります。

(2) 高齢者の居場所

 要介護高齢者のための施設は、定員割れの状況などに対する事業者の受け止め方の結果と思いますが、直近の新規建設は既に少なくなってきており、サ高住や有料老人ホームなどは淘汰されていくような時代になると考えられます。何をもって淘汰されるかといいますと、立地的な部分やサービスの内容といった質の部分、つまり看取りを含めたどういった生活を送れるのかを、高齢者が住まいを選ぶ上で重視することによると考えられます。
fig1  図1の左側円グラフに示すように、65歳以上の高齢者のうち、大体2割ぐらいの方が要介護・要支援認定を受けておられます。そして右側円グラフに示すように、要介護・要支援認定を受けた方の85%は、在宅や、サ高住・有料老人ホーム・認知症グループホームといった高齢者向け住まいに居住しています。つまり要介護・要支援高齢者の約9割は自宅で居住系サービスを利用している点に注意を払うことが必要と思います。
 日本の持ち家は約3000万戸、賃貸住宅は約2000万戸です。65歳以上の単身世帯・夫婦世帯で持家は約900万世帯で、さらに増えてきています。賃貸住宅では262万世帯がお住まいであることに対し、高齢者施設や高齢者向け住まいには201万人がおられます。賃貸住宅や持家で暮らされている高齢者が、より暮らしやすい環境というものを考えていく必要があり、ハウスメーカーを含めて住宅業界が担う役割も大きいと考えています。