住友林業(株) 木化営業部営業チーフマネジャー 東原氏
(1) 「木化宣言」
- この20年くらいで、日本人は特に都会において急速に「木離れ」し、その魅力や価値をあまり感じなくなってきました。住まいにおいても和室離れが進んでいます。
- 日本は森林が国土面積の約7割を占める世界有数の森林大国であり、人々は建築材や紙パルプとしての活用はもちろん、水源の涵養 (かんよう) や土砂災害の防止など、森林からさまざまな恩恵を受けてきました。木の魅力を日本人が再発見できれば、日本の地方に眠っているポテンシャルを呼び起こし、地方創成になると弊社は考えています。日本の底力は、森林大国日本が有する「木」という資源を活かすことと考えています。
- 弊社は、今年で創業325年となりますが、北海道、本州、四国、九州の4ヵ所で、総面積約46,443ヘクタールの森林を保有管理しており、これは日本国土の約900分の1に相当します。他にも海外で約20万haの森林を保有管理しています。木造住宅事業と、木造建材の流通及び製造事業、木質バイオマス発電事業に携わっています。
- 弊社では、木造化・木質化を総称して、「木化」という言葉を用い、改めて木の良さ、価値を共有する「木化宣言」をテーマに、MOCCAの愛称で活動を展開しています。
- 「木化」とは、もともとは生物学的な技術用語で、植物の細胞壁にリグニンが沈着して、組織が堅くなることを指していましたが、弊社ではそれに木造化・木質化を推進するという広い意味でこの言葉を定義づけ、改めて木の良さと価値を共有し、広めていくことを意味するものとしました。
(2) 木の効果を再発見
- 木目は目に優しく、木質感で快適性向上、香りでリラックス、ダニ防除、触感が脳を活性化、木そのものの調湿作用などの良い効果があると言われており、弊社の筑波研究所においてその科学的実証の研究を進めています。全部を木にすると、気分が落ち着かない環境になるが、45%くらいを木にすると最も快適な環境になるといった研究成果が出ています。人間も生き物であり、接するところに生物テクスチャをおくと心が安らぎます。衣服はナイロンよりも絹や木綿の方が心地よいのも同じ理由だと思います。東日本大震災の復興について後ほどお話しますが、コミュニティ復興住宅において、デッキに木が使われているような事例があります。
- 弊社では、顧客の満足度向上のために、徹底的な木のご要望対応を進めていますが、それは木の「よく眠れる、調湿作用がある、リラックスする、目に優しい」といったメリットを生かしながら、木のデメリットとされている「汚れる 反る 割れる 水に弱い 火に弱い 虫 (シロアリなど) に弱い 耐久性がない 地震に弱い」といった点を克服することです。例えば、塗装の最新技術により「調湿作用」というメリットは封印されますが、「汚れる」というデメリットは克服されます。熱処理や薬品注入も、香りや色のメリットは封印されますが、寸法安定や防火・防腐といったデメリット克服が得られます。
- 印刷や塗装技術の技術革新で、本物と見わけのつかない「木調」の製品が出てきました。木目シートフローリングといったものです。つまり似せ物ですが、適材適所に、本物の木を使っていただければと思います。