高齢者の住まい方が、変わってきている。ライフスタイルの変化により、従来の「住宅双六の上がり」である持家居住者のなかにも老後のための転居希望者が多いと聞く。その傾向は、都心マンションへの高齢者の移り住みにも顕れているが、今回のシンポジウムではこの持家居住者の転居傾向に焦点を絞ったアンケート調査結果をもとに、定住でも施設入所でもなく、また都心回帰や田舎暮らしでもない、駅勢圏への転居という第三の選択肢の台頭に注目しながら、高齢者のこれからの住宅選択を総合的に読み解くものである。    
                   

■主 催  ・住宅月間中央イベント実行委員会

■協 賛

  (社)日本住宅建設産業協会
(社)全国中小建築工事業団体
(社)日本木造住宅産業協会
(社)リビングアメニティ協会
(社)全国住宅建設産業協会連合会
(社)日本ツーバイフォー建築協会
(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
(社)新都市ハウジング協会
(財)日本建築センター
(社)プレハブ建築協会
(財)住宅保証機構
(財)住宅生産振興財団
(財)高齢者住宅財団

 

■日 時   平成15年12月10日(水) 13時30分〜16時30分

■会 場   住宅金融公庫 すまい・るホール


 


1.主催者挨拶
    社)住宅生産団体連合会 専務理事 浅野宏

2.第1部 調査報告
    東京ガス都市生活研究所 主任研究員 杉山智美氏

3.第2部 座談会 
   

      座長
      メンバー

千葉大学 教授    小林 秀樹氏
埼玉大学 教授    在塚 礼子氏
明治大学 助教授   園田 眞理子氏
大和ハウスシルバーエイジ研究所
     統括部長  広瀬 元紀氏
東京ガス都市生活研究所
     主任研究員 杉山 智美氏
  
         
 

 首都圏の戸建て持家に暮らすプレ高齢者・高齢者を対象に、現在の住宅・住環境への満足度や、理想と考える老後のライフスタイル・住まい像について現状を把握した。その上で、多様なライフスタイルにおける選択肢の1つとして、現住居地域に心を残す多くの人に対応する住み替えスタイルである“駅勢圏マンション”を提案した。そして、“駅勢圏マンション”の潜在的ニーズがどの程度見込めるかの把握と、住み替えが困難となっている状況の整理を図った。

Q.今後もずっと現在の住居に住み続けるか?

 
 

 

Q.駅勢圏マンションに転居したいか?

       
                   
 


 第1部の結果にもとづき、高齢期の住み替えに関する潜在的ニーズの顕在化に向けて、高齢期の「転居」と「定住」の2つの選択肢について議論した。


1. 庭付き一戸建住宅は、なぜ「終の住処」ではなかったのか

 定住希望が8割を越えるが、駅勢圏マンションという選択肢が示されると6割に下がる。潜在的な移り住みニーズがあるということではないか。なぜ庭付一戸建ではダメなのか。

 

2. 老後の居住に「第三の選択肢」はあるか

  定住でもない施設居住でもない「転居」、田舎でも都心でもない、今の住まいと同じ地域内の「駅勢圏マンションへ」という第三の選択肢はあり得るのか。
 高齢者、プレ高齢者は施設ではなく、普通の住宅への転居を望んでいる。介護付きではないのになぜか?
 高齢者、プレ高齢者は田舎でも都心でもない第三の選択肢・駅勢圏を望む人々が2割以上いる。なぜか?
「転居」ニーズは潜在的にはあるが、なかなか顕在化してこない。どうやったら、潜在的なニーズが顕在化するのか。魅力的な転居先とは、どのような条件をもつものか?

 

3. 定住できる条件は何か

  過半数は定住を希望している。しかし、潜在的な不安を抱えている。郊外の一戸建住宅地を、安心して老後まで居住できる場にする条件とは何か。どのような対応方法が必要か。

                 
 
 
 
   今回の調査では、多様なライフスタイルの中で、特に現住居地域に心を残す多くの人々にフィットする住み替えスタイルとして、駅勢圏マンションへの転居を深堀りして検討し、その期待度と、課題が見えてきた。
 同じように、多様なライフスタイルの他の住み替えスタイルも顕在化されていないニーズがある筈であり、又そこには解決すべき課題がある。これらの課題を明らかにし、また、整理して、その対策を考えるのが、今後の住宅生産団体連合会・「成熟社会居住研究会」で検討すべき課題と考えている。
     
   
⇒多様なライフスタイルに応じた住み替えスタイルは、
         「老後のライフスタイルシミュレーション」参照

 住宅産業は、これらの多様な住み替えニーズ(潜在的)に対応するべく、移転先の魅力ある住宅・住環境、生活支援サービス、住み替え支援サービス等も提案していかなければならない。