第4回の今回は、地域と連携しながら、高齢者の新しい暮らし方を研究する中で、実際にグループリビングライフリ−荏田を提供するなど、積極的に活動されている日本アクティブライフクラブの河口博行さん、 鰐淵祐司さんを招き、「高齢者の居住動向と新しい住まい方;グループリビングへの取り組み」について講演をしていただいた。

■主 催
高齢社会研究会
■日 時
 

平成16年11月26日(金)

  18時00分〜20時30分
■会 場
 

住宅生産団体連合会 会議室

 

1.挨拶
園田眞理子(明治大学助教授)
2.第1部 講演「高齢者の居住動向と新しい住まい方;グループリビングへの取り組み」
  講師 日本アクティブライフクラブ  河口博行氏  鰐淵祐司氏
3.第2部 座談会
  司会進行 園田眞理子(明治大学助教授)
  メンバー 高齢社会研究会
    住宅生産団体連合会会員企業メンバー
 
あ
     
 

 

◆住宅双六
 

京阪奈NTと千葉NTで調査を実施
最初は親の家→賃貸→持ちマンション→持ち家 というステップが50才までの現状
その後、リフォーム、高優賃やケア付き住宅への住みかわりの理想が読み取れる。
港北、多摩でも同様の調査をすればもっと明らかになってくるはず?

◆残された配偶者への贈り物、男女で大きな意識の違い
  一般的に男性の方が女性より早く亡くなり、残された妻は約10年近く単身で生きなければならない。そこで、「残される配偶者に何を残したいか?」という質問をした。
男性は、貯蓄 保険 株といった財産を考える人が多数であり、女性は、貯蓄の他に、ケア付き住宅や相談や助けてくれる人、といった回答が多かった。
女性がいかにひとりで生きていくかという現実を直視していることがわかる。
男性の意識は20世紀から変化しておらず、女性の方がいかに生涯を楽しむか、安心して暮らすかという時代の流れを敏感に感じているのだろう。
 
◆ 高齢者の財布を動すには
  今、政府も自治体もお金がない。しかし国民、特に高齢者はお金を持っている。これからは高齢者の資産をいかに循環させるか?高齢者にお金を使わせるか?がポイントになってくる。
実際のところ、使えない、使うところがない。
高齢者の資産、半分は持ち家であり、動かせない、使えない資産である。また、老後の生活費、災害費など不確定要素が多いのも資産を動かせない原因の一つである。さらにそれを超えて、出資したくなる魅力的なものがないという供給側の問題も上げられるだろう。
定年後の不安という調査からもわかるが、生活費の不安については定年前世代が47%なのに比べ、定年後世代は15%であり、いざ暮らしてみるとなんとかなるというのが実状である。
自立して生活しようとする高齢者が増えてきている、しかし、配偶者が先立ったり、要介護になったりと不安は尽きない。この部分を商品として供給されていないのも事実であり、老後の安心を買う=それ相応の住宅、生活を買う という供給形態が出てこなければならない。
◆ グループリビング ライフリー荏田
  東急ホームとNPOがコラボレーションして設立。高齢者が自立しながら共に暮らすグループリビング。一人暮らしの元気な高齢者が、賃貸で気軽に趣味や学習に専念できる環境がここにはある。
ライフリー荏田は、地域医療とどう連携するか?また地域支援をどうするか?という点を重視し、「様々な生き方を、自分で選択し、自立していく」というスタイルを確立している。
食事に関しては地域ボランティアに全部まかせたり、音楽パーティなどに地域の人を招き入れたり、昼間は入居者の茶道教室、地域への食事会等として開放したり、と地域資源(人材)と関わり合いながら暮らすことができている。
ライフリー荏田のようにNPOが施設運営をする場合、地主に対する信用力がNPOだけではまだ十分ではない。この点、企業とコラボすることで地主の不安を解消できるのが特徴である。
◆奈良の法隆寺コーポラティブハウス
  法隆寺の近くに、コーポラティブハウスを設立。特徴的なのは運営方式であり、ここでは入居者自らが出資し株式会社をつくり、その運営する住宅に店子として入居するという方式をとっている。入居者(株主)たちはそれぞれの長所を活かして、暮らしている。これがボケ防止にも一役を買っているらしい。
 
 

 第1部の講演に基づき、ライフリ−荏田の入居者や、今後のビジネスマーケットなど刺激的な内容が話し合われた。

  1.25年前、大規模な宅地開発の購入をしたのは30、40代が多く、その世代が今、一気に高齢期を迎えている。そのような地域に関してはどのように考えているか?
    年代によって意識に差がある。団塊世代より上は土地・建物の所有権は男性であるが、団塊以降の世代というのは経済の実権が女性に移りつつあり、共同所有が半分以上を占めている。
また高齢者には、いいものを実際作って、現物を見せるのが一番。それがいいと思えば移り住む、それくらいの資金は持っている。
   
 
  2.イキイキと住むために、介護サービスは地域で必要か?
    当然必要となる。訪問介護とデイサービスを提携していくことで、よりよい質になっていく。
藤沢で事業展開をしている例では、そこは町中に9つの施設を持っている。そこは、地域の拠点にもなり、高齢者が集まりパーティを開催するなどしている。さらにそこでは子供も遊ぶ場がある。また、このような施設の就労者を考えるとき、主婦が一番だと思う。こうした地域ビジネスの展開も考えられるのではないか。
 
  3.ライフリー荏田に関して、今の居住者が移り住む前はどこに?
    子供が東急沿線で、親はあちこちの地方に一人暮らしで住んでいた。親が心配になった子供が、安心できるようにと呼んだケースが多い。
当然、居住者は地域になじみがない人ばかりなので地域にうまく溶け込んでいくために、まず地域を引き込むことを考えた。
 
 
  4.ライフリーに住んでいる人は、積極的に人生を楽しもうという高齢者が多いと思うが、中には個性が強い人もいると思う。コーディネーターの重要性については?
 

  ライフリーの運営に参画しているNPOのスタッフが6人いて、彼らがパイプ役になって問題は解消している。人間不思議なもので、住み始めるとたいした問題はなくなってくるようである。
また、コーディネーターの役割について、有料老人ホームとの違いだが、ライフリーのような施設は2種類のコーディネーターの存在が決定的になってくる。「最初から企画(メンバーや建物構成など)をして設計まで活かす人」と「施設ができた後の管理をする施設長」だ。この2種類のうちどちらか一つが欠けてはうまくいかない。

   
 
  5.郊外団地では高齢者が増えてきている。そういう人たちは高齢者向け住宅雑誌などを見るだけではピンとこないものなのか?住み慣れた地域に安心できるものが建ち、自分の目で確認しなければ、安心できないものなのか?
    大阪の千里NTの話だが、今では企業の重役の人が多く住んでいる。そういう人たちに理屈だけで説明をしても、文句を言うだけで動かない。ならば住み慣れた地域に、誰かが楽しい姿、雰囲気を伝えれば次第に納得してもらえるのではないかと思う。