第5回「家やまちの絵本」コンクール
 

家やまちの絵本づくりのカナメ

―総評にかえて

 家やまちの絵本づくりで肝心なことは何でしょう?
 先ずは、住むことの深さと新しさを表わすことです。例えば、きゅうり1本から地球全体に至るまで、生命あるものとの共生への想いをみずみずしく描く、等々。
 第2に、思い出や記憶の中に、くらし方の大切さや豊かさがあることを発見し、過去の不便さの中の豊かさへの気づきを促すこと。
 第3に、自ら状況をつくりかえる行動提起を物語的に楽しく表現すること。
 第4に、物語の流れの中に、意表をつく驚きや不思議さがおりこまれ、トラブルがエネルギーに変わる状況を生き生きと示されること。
 第5に、表現手法にユニークで思いがけない仕掛け等が創意工夫されていること。
 これらは何れも、住まい・まちを住み手の立場からよりよくしていく際の基本的視点であり作法です。絵本づくりを通して、現実を再編・再創造していく発想や手がかりを豊かにしていくことにつながっていくのです。
 本年度の応募作品には、これらにおいて秀逸なものがいくつもいくつもありました。次年度もさらに感動を呼ぶ作品に出あえることを期待しています。

2009年11月
第5回「家やまちの絵本」コンクール審査委員長
愛知産業大学大学院 教授 延藤 安弘


 
応募総数 :
1,166作品
子どもの部 :
454作品
中学生・高校生の部 :
547作品
大人の部
42作品
合作の部 :
123作品
審査委員: 小澤 紀美子
町田 万里子
大道 博敏
勝田 映子
越海 興一
小柳 賛平
佐々木 宏
(東京学芸大学 名誉教授)
(手作り絵本研究家)
(文京区立駒本小学校 主幹教論)
(筑波大学附属小学校 教諭)
(国土交通省住宅局 木造住宅振興室長)
(住宅金融支援機構 CS推進部長)
(住宅生産団体連合会 専務理事)
(順不同・敬称略)
 
国土交通大臣賞
 
わたしのおうちはちゅうざいしょ
絵本を読む

わたしのおうちはちゅうざいしょ

待井 尚世 ―(静岡県)―
【講評】
子どもの頃に住んでいた古い家の環境と暮らしが、小さな女の子、ひなちゃんの目を通して鮮やかに描かれています。お父さんの警察という職業上、職場と家が一緒で子ども心にも安全、安心して暮らせる場となっています。落ち着いた色調でまとめられていて、誰もがこんな暮らしの思い出を持っていたことを思い起こしてくれる絵本です。
 
文部科学大臣奨励賞
 
デカきゅうり
絵本を読む

デカきゅうり

村松 ななみ ―佐倉市立西志津小学校6年生:千葉県―
【講評】
絵の構成、構図、独特な色づかいが素晴らしく、主人公のデカきゅうりをとおして、家や家族の様子をよく表しています。アリやてるてるぼうずのキャラクターもよいアクセントになっています。
 
 
白黒の町
絵本を読む

白黒の町

佐藤 ひかり ―船橋市立高根中学校3年生:千葉県―
【講評】
花も緑もない「グレイ」な町がいのち色にひたされた「グレイト」な町に変わる感動の物語。絵本表現と劇画表現のみずみずしい融合。
 
住宅金融公庫総裁賞
 
ななめちゃん
絵本を読む

ななめちゃん

塩谷 若菜 ―ひたち学院幼稚園:茨城県―
塩谷 修
塩谷 理絵
【講評】
幼い子どもの描く空想の世界に、両親も共に入っていき、いっしょに創り上げていく生き生きとした表現世界です。独創的でユーモアに満ちています。
 
 
住生活月間中央イベント実行委員会委員長賞
 
いっちゃんとななちゃんの体の中の家や町
絵本を読む

いっちゃんとななちゃんの体の中の家や町

川島 菜々 ―横浜市立平戸小学校3年生:神奈川県―
【講評】
体の中が町だったら・・・そんな豊かな発想が、ページいっぱいに広がった作品です。小さくなる薬を間違えて飲んだいっちゃんとななちゃんが入ってしまったのは、なんとお父さんの体の中。べろ町の「すっぱいさん」や「しょっぱいさん」。のど商店街の薬屋さん。しんぞう町では、「はっけっきゅうさん」や「けっしょうばんさん」にも出会います。二人のダイナミックな旅にハラハラ、ドキドキしながら体のしくみにも興味がわいてくる魅力あふれる絵本です。
 
 
ぼくらの街
絵本を読む

ぼくらの街

林 晴 ―日野市立三沢中学校3年生:東京都―
【講評】
色のない街を自然の息づくカラフルな場所に変える希望の物語。細密にして遊び心のある表現が全体を引き締めています。
 
 
どんな木うえる?
絵本を読む

どんな木うえる?

杉本 詠 ―愛知県―
【講評】
引っ越ししてきた家の庭に「どんな木を植えようか」とそれぞれの願いや夢を語るなかで、思い描いた夢が多く、早く木を植えないと大きな木にならないと気がつき、家族の暮らしの豊かなイメージを紡いでいく絵本です。
 
 
ちきゅうがあぶないよ
絵本を読む

ちきゅうがあぶないよ

上田 一輝 ―新宿区立津久戸小学校4年生:東京都―
上田 渚々美 ―同2年生―
上田 友紀
【講評】
エコをテーマとする見事なポップアップ型絵本。ページをめくるたびに家族で話し合う楽しそうな声が聞こえてきそうです。牛乳パックを用いた仕掛けはユニークで楽しんで作っていることが伝わってきます。
 
入選
七つの星をさがして
絵本を読む

七つの星をさがして

都築 翔 ―掛川市立大渕小学校6年生:静岡県―
【講評】
力作です。飛び出す絵の工夫が目を引きますが、絵の具や色えぴつの部分もしっかり描かれています。お話の展開も様々な場面づくりができるよう工夫されています。
入選
ふしぎなみ
絵本を読む

ふしぎなみ

中村 史龍 ―大田区立池上第二小学校3年生:東京都―
【講評】
作者が楽しみながら描いている様子が、絵本からうかがえます。主人公がスイカのたねになってスイカの世界を冒険していくストーリーの展開も良くできています。
入選
ノミの家族がたいへんだ
絵本を読む

ノミの家族がたいへんだ

益田 大智 ―川口市立並木小学校4年生:埼玉県―
【講評】
主人公がノミという発想が楽しい。ノミが主人公ならではのお話の展開ができました。絵は油性マジックを大胆につかい、お話の内容に対して効果的でした。
入選
ゆめのなかの7本のかぎ
絵本を読む

ゆめのなかの7本のかぎ

鈴木 弓舞 ―青山学院初等部2年生:東京都―
【講評】
女の子がある日ポストに行くと、箱が入っていました。中には7本のかぎが・・・。こうして7本のかぎであけるクローゼットや、机の中から出てくるものは・・・。ひとつひとつかぎをあけるたびに、ゆめの世界に迷い込んでいくワクワク感がたまりません。7つめのかぎをあけたときに広がる家族との新しい生活。明るい未来を、力強く照らしている絵本です。
入選
きょうりゅうの家
絵本を読む

きょうりゅうの家

池田 悠太 ―横浜市立つづきの丘小学校2年生:神奈川県―
【講評】
のびのびとした楽しい作品です。それぞれの恐竜の特徴をよくとらえ「きょうりゅうの家」を考えています。作者が楽しみながら描いている姿がうかがえます。
入選
おうちをたてるなら
絵本を読む

おうちをたてるなら

長坂 凪 ―ノートルダム学院小学校6年生:京都府―
【講評】
丘の上の小さな家から、かわいいねこちゃんが顔を出しています。いちばん必要なものは・・・やっぱりテーブルとイス。それから・・・それから・・・。ねこちゃんは大切なものを次々に思いついていきます。でもやっぱり一番大切なものは・・・?ねこちゃんと一緒に探しものをしながら、心の底の一番温かいものにたどりつけるすてきな絵本です。
入選
ねねちゃんと三びきの動物たち
絵本を読む

ねねちゃんと三びきの動物たち

山内 侑南 ―横浜市立川上小学校3年生:神奈川県―
【講評】
この絵本は、すべて布でできています。絵柄は、ひとつひとつていねいにアップリケされているのです。この絵本の主人公ねねちゃんも、フェルトのお人形です。ねねちゃんは、表紙のキラキラしたお花のポケットの中で「わたしを動かしながら読んでね」と読者に呼びかけます。誰もが、このねねちゃんと一緒に、夢の世界に出かけたくなるような、手のぬくもりを感じるあたたかい手芸絵本です。
 
子どもと大人の合作の部
 
入選
決意
絵本を読む

決意

奥田 未来 ―静岡市立長田西中学校3年生:静岡県―
【講評】
カワセミとヤマセミの生命の葛藤の物語展開に加えて、生きものたちの生彩ある動きと色合いの表現が見るものをひきつけてやまない。
入選
おばあさんと木のおうち
絵本を読む

おばあさんと木のおうち

田中 美友紀 ―香川県立高松工芸高等学校3年生:香川県―
【講評】
木の生命と人の生涯を重ねあわせた共感を呼ぶ作品。物語のように生きる姿勢が、日常の暮らしの中のふるまいの中に表されています。
入選
ペンギンアパート
絵本を読む

ペンギンアパート

塩田 順 ―筑波大学附属中学校1年生:東京都―
【講評】
家族の成長と家の成長のストーリー展開の中でペンギンアパートができます。いろいろな素材の紙のコラージュ表現を通して、個性的な住まい方がうかがえます。
入選
ネコのたび
絵本を読む

ネコのたび

竹下 仁美 ―佐賀県立鹿島実業高等学校3年生:佐賀県―
【講評】
安心して住める居場所を見つけるまでのネコの流浪のたびを通して、現実と希望の両面を的確に描いています。全頁にわたってくりぬかれたネコのシルエットの仕掛りがユニークです。
入選
じゃがいもむすめ
絵本を読む

じゃがいもむすめ

上郎 まどか ―町田市立堺中学校3年生:東京都―
【講評】
生命の輪廻(りんね)の意表をつく物語展開。色鉛筆仕上げの表現にはやさしさと楽しさがあふれています。
 
大人の部
 
入選
おじいちゃんの元気のもと
絵本を読む

おじいちゃんの元気のもと

角坂 博子 ―千葉県―
【講評】
入院していたおじいちゃんが自分で設計した家に戻り、元気を回復していく物語です。日本の伝統的な家のつくりや暮らしが読み取れると共に、人間が生きていく上で「住む場」が基本であること示してくれる温もりを感じます。
入選
おばあちゃんち
絵本を読む

おばあちゃんち

赤羽 晶子 ―神奈川県―
【講評】
子どもは身近な大人のまなざしに守られながら育つ、ということを表現しています。ギスギスした日本の暮らしに「生きられた空間」としての住空間の意味を再考させてくれます。
入選
みかづきじまのまち
絵本を読む

みかづきじまのまち

川本 志保 ―北海道―
【講評】
みかづきの形をした島の南と北のはずれに寂しい気持ちで暮らしていた二人の男性がいました。新しい暮らしの場所を求めて、それぞれ島の反対側へ歩き、出会い、高い三日月形の塔をつくりました。その希望の塔を目指して、いろいろな人が集まってきて、住む喜びのあふれる島になっていく物語です。
入選
あついあつい
絵本を読む

あついあつい

燒リ 温子 ―東京都―
【講評】
地球温暖化や水不足の今日的地球規模の環境問題を単に指摘するのでなく、「地球の間借人」としての人間の暮らし方を示唆してくれる絵本です。
入選
つばめの家
絵本を読む

つばめの家

唐木 拡子 ―長野県―
【講評】
つばめの夫婦は老夫婦と若夫婦の住む家の軒先に巣を作って子育てをしていましたが、巣がこわれてかたい地面に落ちてしまいます。さらには大きなスズメバチの体当たりをうけてしまいます。巣の絵を描いていた若い奥さんは嘆き悲しみますが、小さなおかし箱にヒナを移し、家族に温かく見守られながら子育てをするつばめのお話ですが、私たち人間の子育てにも必要なまなざしです。
 
合作の部
 
入選
ゆめのいえ
絵本を読む

ゆめのいえ

堀 葉月 ―新潟県―
木原 隆明
【講評】
ページをめくるごとにスックと立ち上がる立体の家(ポップアップ建築ペーパークラフト)の見事さに驚かされます。想像力を掻き立てられ、家の中をのぞきこんでみたくなるような、精巧な造りの仕掛け絵本です。
入選
しあわせのしょうてんがい
絵本を読む

しあわせのしょうてんがい

山内 里菜 ―神戸市立東垂水小学校1年生:兵庫県―
山内 晃生 ―同4年生―
【講評】
少しの家と木しかない静かなまちがカンガルーのハンモックやさんができたことから、動物たちがいろいろなお店を開くようになり楽しい商店街になっていきます。まちが育っていくワクワク感に満ちたストーリー展開が楽しい。
入選
おおきくなあれ
絵本を読む

おおきくなあれ

増田 奈生 ―沖洲幼稚園:徳島県―
増田 香織
【講評】
動きのある力強い伸び伸びした絵に魅了されます。たくさんの生きものに囲まれ、豊かな自然に包まれて暮らしたいという思いが伝わります。
入選
まあちゃんがすみたいすてきなおうち
絵本を読む

まあちゃんがすみたいすてきなおうち

廣世 真麻 ―城南もなみ学園:富山県―
廣世 紫
【講評】
「こんなおうちに住みたい」という女の子とお母さんの会話の繰り返しでストーリーが展開していきます。和紙の質感を生かしたお母さんのちぎり絵と子どもの描いたユーモラスな絵が調和し、想像の世界が美しく表現されています。
入選
いい いえ どれだ?
絵本を読む

いい いえ どれだ?

入江 夏美 ―船橋市立高根中学校1年生:千葉県―
能渡 亜莉奈
金子 栞
今井 菜美
【講評】
一軒家とマンションと団地、という3つの家が「どの家が一番いい家か」を言い争うという発想がユニークで、面白い。話の展開に思わずひきつけられます。
 
 

▲ページのトップへ